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犬・猫・ペットの治療と予防│リリー動物病院

激動の?10日間

2日の日曜の朝、ムサシ(我が家の家族であり、当院の貧血の患者さんに血をあげるお役目を持つ供血犬、シェパード♂7歳)に朝ご飯をあげたら、食欲が全くなかったので少し気になったのだが、そのまま夜を迎えた。

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夜10時くらいだっただろうか・・・。
息子達とテレビを見ていたら、ムサシの散歩から帰ってきたムサシの一番の飼い主さんである次男がいきなり叫んだ。
「母さん!!ムサシの腹が張ってて触ると痛がるし息も苦しそうなんだわ!ちょっと診てやって!!」とのこと。
起きている症状と大型犬ということから、「急性胃拡張もしくはそれによって併発する胃捻転」ではないかと判断した私は、半年くらい前の西依先生のセミナーの後のお茶会で「急性胃拡張もしくは胃捻転のワンちゃんが鍼灸の治療で手術をしなくて済んだ。」と言う話が出た事を思い出したので、「一先ずこんな時間だし、ここは鍼灸治療をしてみよう!」と思い、長男に鍼灸のセットを病院まで取りに行かせて直ぐに治療に入った。

家族全員が見守る中、治療を始めて30分くらいした頃だろうか。
ものすごい悪臭がしたかと思うと、胃の中のガスが抜けて楽になったようでムサシが急に元気になり始めた。
と、同時にお腹もすっきりしていた。
だが、事態はそれだけでは済まなかった・・・。

翌日、血液検査と共にレントゲン検査等をしたところ、白血球は正常値の5倍であり肝臓の値も高く、ムサシの腹部には液体がたくさん貯留していて脾臓が恐ろしいくらい腫れていることが解った。
そしてその液体は血液であり早急に手術をしないとムサシの命に係わる状況だったので、急遽脾臓摘出手術をすることになった。
(重ねて言えば、いつから脾臓が腫大していたのか分からないが、そのせいで脾臓のお隣にある胃が圧迫されて血流障害等が起き、胃の中にガスが溜まって胃拡張になり、2日の日に苦しくなったのだと思われる。)

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写真2

取り出した脾臓は、かなり肥大しており悪性腫瘍の部分は破裂しかけていた。(写真2)
術後東京の動物専門の検査センターに送ったところ、「血管肉腫」と、診断された。
血管肉腫は大型犬、特にシェパードに多い悪性の腫瘍である。
脾臓と共に腫瘍を摘出しても抗癌剤を使わなければ、生存中央値は19~86日であると言われている。
・・・調べる文献によって日数に多少のずれはあるが、要は「取ったらよし!」ではなく、現時点でムサシの身体の中でいろんな事が起こりつつあり、抗癌治療をしない限りもって3か月、早くて2週間くらいで死んでしまうと言うことなのだ。
そして、抗癌剤を使って延命できたとしても、その時の平均寿命日数は長くて1年と言われている。

検査センターの結果が出る前に 「血管肉腫かも知れない。」 と思った段階で家族を招集して家族会議をした。
上の事を家族に話した後、「副作用はあるけど、前に進む為に母さんはムサシに抗癌剤を使いたいと思うのね!みんなどう思う?!」 と一番の飼い主さんである次男と他の家族に尋ねた。
すると「ムサシが少しでも長生きしてくれるのなら・・・。」と言うことで、全員一致で抗癌剤を使う事に決まった。

その間、何度か血液検査等をしながらムサシの状態を診てきたが、自宅の運動場に入れても、やはり以前の様なやんちゃ振りは見受けられず、猫や外部の人に対して吠える声にも力が入らない感じであった。
そして、今日これから血液検査等をしながらムサシの状態が良ければ抗癌治療に入る。

開業してずっとこれまでの間、「少しでも飼い主さまの気持ちに寄り添う事ができたら・・・。」と言う思いで診察をしてきた。(つもりである。)
大事な家族である動物を亡くす飼い主さまのお気持ちに触れる度に心が痛くなったし、「あの飼い主さまは今、どうしておみえだろうか・・・?!お元気だろうか・・・?!」と、考える事もしばしばあった。
だが、こうして自分の大事な家族が「余命いくばくか・・・。」と言う状況を体験してみると、あの時の飼い主さま達のお気持ちがより身に染みて解る・・・。

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※病院に行く時間になりましたので、今日のコラムはここまでにします。最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
久々のコラムでしたがこんな内容になってしまいました。
でも、他の患者さん同様、全力を尽くしてムサシを見守って行こうと思っています。

2012年 9月 12日掲載
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