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犬・猫・ペットの治療と予防│リリー動物病院

ペットと災害対策

先日、日本で続けて大きな地震があり、愛知県も大きな揺れを観測しました。

皆さんはご無事でしたでしょうか。

丁度今から10年前、2011年東日本大震災当時、避難指示区域で飼われていた犬猫はおよそ1万6000匹。そのうち飼い主と共に避難できたのはわずか1670匹でした。

これを受け環境省は2013年に「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を作成。2016年の4月に起きた熊本地震の経験を踏まえ、2018年に「人とペットの災害対策ガイドライン」に改定、発行されました。

それに基づき、今回は災害時におけるペットと共に身を守るのに大切な事をご紹介いたします。

いつ起こるかわからないからこそ、できるだけの対策を行い災害に備えましょう。

☆同行避難

同行避難とは災害時に飼い主がペットを連れて避難することです。避難場所でペットと一緒に過ごせるかは各自治体や避難場所の判断に任されています。

一方、同伴避難はペットと一緒に避難し,かつ避難所で一緒に過ごすことです。

飼い主にとっては同伴避難が理想かもしれませんが、環境省が作成している「人とペットの災害対策ガイドライン」では同行避難が推奨されています。

避難場所ではペットを飼っている方、動物が苦手な方、動物アレルギーを持っている方、いろいろな人が一つに集まって生活することになります。

トラブルを防ぐためにも同行避難が推奨されています。

☆事前にできる事

・混合ワクチン

避難所・シェルターでのウイルス性疾患の予防になります。

ワクチンは病気を予防することの他に、その病気にかかっていないこと・他へうつす心配のないことの証明にもなります。災害時でなくてもペットや自分自身を 守ることにつながるので忘れず接種しましょう。

・狂犬病ワクチン

わんちゃんの場合、狂犬病の予防・登録は必ず行ってください。

日本にいる限り今のところ狂犬病にかかるリスクはほとんどありませんが、個 体認識や迷子対策のために鑑札・狂犬病予防注射済票の装着をしましょう。これは飼い主の義務として定められています。

・マイクロチップ

迷子になってしまった場合でもマイクロチップを装着していればレーダーで読み取りその子の情報、飼い主の情報が分かるようになっています。

マイクロチップ義務化により2022年6月以降にペットショップやブリーダーから迎えた子には既に装着されているはずです。狂犬病と違いマイクロチップの装着は努力義務となっており、罰則はありませんが(販売業者は義務)まだ装着していない子にはマイクロチップの装着をお勧めします。

金額や装着の流れ等の詳細はお近くの動物病院にお問い合わせください。

・避難ルート、預け先

災害時の避難場所はどこか、どのようなルートで移動するのか事前にしっかりと確認しておきましょう。自治体によってはボランティア団体や日本獣医師会等が主催するペット同行避難訓練などもあります。自治体のホームページや広報誌、掲示板などで情報収集をしてみて下さい。

ただ、ペットと一緒に過ごす「同伴避難」ができる避難所は限られているのが現状で、そういった場合避難所以外の預け先を見つけておく必要があります。親戚や友人その他預け可能な施設を探して、何かあったときに預けられるようお願いをしておきましょう。

☆用意しておくもの

人とペットでは用意すべきものが違います。今回は犬・猫特有のものだけご紹介させて頂きます。

〇優先順位高(命や健康にかかわるもの)

・5日以上の水

支援物資の配給までいきるため。できれば7日分以上準備しておきましょう。ペットによって1日に飲む水の量も変わってくるので、どれくらい普段飲んでいるか把握しておきましょう。

・5日以上のフード

あらかじめ用意しておくと酸化しやすいためもともと小分けになっているものがいいでしょう。場所が変わると緊張して食べられなくなってしまう子もいます。慣れたもの・お気に入りのものを用意しましょう。慢性疾患のある子は療法食も必須です。

・食器

衛生対策のため、殺菌が付着しづらいステンレスがおすすめです。

陶器は割れてしまう危険がある為避けましょう。

・キャリーバッグ

大型犬等運ぶのが困難な子以外はできるだけキャリーバッグにいれて移動しましょう。

おすすめは肩掛けにもリュックタイプにもなり、使わないときはコンパクトに折りたためるものです。

・首輪・リード・洗濯ネット

リードは伸びない物で、首輪・リードともに予備も用意しておきましょう。小型犬はリードを付けたうえでキャリーバッグに入れる必要がある為、キャリーバックに入れて移動する場合もリードは用意しておきましょう。猫は洗濯ネットに入れてからキャリーバックに入れるようにしましょう。

・排泄物の処理用具

ペットシーツや猫砂は多めに用意しておきましょう。臭いの管理はペットトラブル防止に重要ですので臭いの出にくいうんち袋も必須です。トイレトレーニングがまだできておらず、あちこちで排尿してしまう子にはペット用のおむつもおすすめです。

・薬

慢性疾患のある子は薬を必ず待っていきましょう。あらかじめ緊急バッグに入れておくのは難しいと思いますので、何かあった時すぐに持ち出せるようにしておきましょう。

〇優先順位中(情報)

・緊急連絡先情報

避難所についてから別行動することになった場合必要になります。飼い主の緊急連絡先、飼い主以外の緊急連絡先、避難所以外の預け先、かかり付けの病院等の連絡先があるといいでしょう。避難所の以外の預け先例として親戚、友人、かかりつけの動物病院、訓練所等があります。このようなときに預けることが可能か確認しておきましょう。

・ペットの健康手帳

個体認識、迷子対策のために写真などペットの特徴を捉えるものを貼っておくといいでしょう。(画像は携帯にも保存しておく)

また、狂犬病予防や混合ワクチンの証明書のコピーも一緒に入れておきましょう。

〇優先順位低(無くても生きられるがあると便利なもの)

・タオルやおもちゃ等においのついたもの

お気に入りの物やお家の匂いのする物があると安心できます。タオルは防寒としても使えるのでおすすめです。

・ガムテープ、マジック

ケージの補強や、名前を書くのに使えます。持ち物には名前の書ける物には全て記入しましょう。ケージは経年劣化で壊れやすくなるので怪しい部分はガムテープで補強しておくといいでしょう。またケージ内でパニックになってしまったときに暴れた勢いで蓋が開いてしまわないよう移動の際は扉部分の補強をしましょう。

・犬用靴下やバンテージ

大型犬の場合歩いて避難する事になるかと思います。災害時は瓦礫が落ちていることが多いため分でケガをしないよう靴下をはかせるという手もあります。

ただ靴下が苦手な子も多く逆に歩けなくなってしまう場合もあるのでその子に合わせて使うようにして下さい。

ひとつひとつ揃えるのが面倒であれば、ペット用の防災セットも売っているのでそちらも良ければチェックしてみてください。インターネットで検索すると沢山出てきますので、その子に合ったものを用意してください。

何かあった時事前にまとまっていなければすぐに家を出ることができませんので、早めに準備してすぐ取り出せるところに置いておきましょう。

☆ケガに注意!

家の中や道路、水害時のぬかるみの中に散乱したガラスの破片や瓦礫やクギ、倒壊家屋の不安定な足場など、移動中にも危険はいっぱいです。ペットの肉球が損傷したり骨折、関節炎、靱帯損傷を引き起こしてしまうこともあります。キャリーやゲージ無しでの避難は危険なため、キャリーに入れて持てるくらいの大きさの子であればできるだけキャリーに入れて移動しましょう。中型~大型犬は難しいと思いますので飼い主が出来るだけ予防してあげることが大切です。

自宅の家具の固定、窓ガラスなどの散乱防止ガラスへの変更でまず家の中でのケガを防止しましょう。避難時の道路状況の確認と履けるのであれば犬用の靴を履かせて避難しましょう。危険だと感じたら別の道を通って下さい。その為、何通りかの避難ルートを決めておくといいでしょう。

無事避難所へ着いたらペットの全身状態を観察し、何か異常が無いかチェックして下さい。

☆ペットがパニックに…

大地震の発生時ペットによっては恐怖とパニック状態で動けなくなったり、慌てて走り回ったりしてしまいます。また、冷蔵庫や洗濯機の後ろ、クローゼットの奥に逃げ込むことがあります。

これは良く逃げる場所を飼い主が把握しておくこと、そして飼い主の手の届かないところに行かないよう、逃げ込む危険性のある場所には柵などを設置しておくことで予防できます。

それでも逃げ込んでしまった場合は、ペットの好きな匂いのおやつ、興味を引く音などで呼び寄せる必要がある為、普段からトレーニングをしておくと良いでしょう。

☆最後に

もしもの時に事前に準備しておかなければとっさに動くことが出来ません。そして飼い主が無事でなければペットは避難することも家でひとり生き延びることも出来ません。

今回はペットの避難に焦点を当ててお話ししましたが、人間の命の守り方、避難の仕方もしっかりと確認し、可能であれば避難訓練に参加しておきましょう。

また、色々な人が沢山いる中にペット連れて入るのでトラブルが発生してしまう可能性もあります。避難所でのトラブル防止のためにもトイレ訓練やしつけ、社会化をおこないましょう。

慣れない環境で過ごすペットは、ストレスが溜まり体調を崩すことも多くあります。撫でたり、抱きしめたり、声をかけたりしてあげながら、ペットのストレスを少しでも減らしてあげてください。

文責:看護師 林

(動物看護専門誌 aSより引用)

2021年 3月 11日掲載
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