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犬・猫・ペットの治療と予防│リリー動物病院

「ムサシの死・・・飼い主としての自分を見つめて~その②『喪の作業』」

ムサシが死んで1週間くらい経った頃でしょうか・・・。
仕事中に看護師のYさんに、「先生は、ケンちゃん(我が家のもう一頭の犬、15歳♂ミニチュアダックス)がいてくれるから、ペットロスにならなくて済んでるんですね!」と言われました。

「え~!? Yさん、全然違うんだよぉ~!! 
三か月くらい前にあなたの猫ちゃんの具合が悪くなって、うちに入院させたことあったでしょ!? そん時、あなた病院で働いてる間もめっちゃブルーになってたから、『Yさんの心配な気持ちは解るけど、顔に出し過ぎだよ~!』って、私あなたに注意したよね~・・・。そんな事言った私がそうそう悲しみを顔に出すわけにはイカンでしょう~・・・。」と、心の中で呟きました。(Yさん、ごめんね・・・!)

本当の事を言うと、仕事の合間にムサシを思い出してはトイレでは泣き・・・帰宅してはムサシが居た玄関で泣き・・・お散歩したコースを車で通った時にも泣き・・・鍼灸で大型犬の治療をさせて頂いたらまたうるうる来る始末・・・結構みんなに分からないように泣いてたんですね・・・。
私はバリバリペットロスでした。 
ただ、そこそこ仕事が忙しかったのでまだ良かったかも知れません。

ムサシがこの世を去った翌日、たまたまシータヒーリング仲間に電話した時、彼女にこう言われました。
「ムサシは、もう今世での役割を果たしたから、これからはゆりちゃん達の事を守る為に光の国へ行ったんだよ~。我慢しなくていいからいっぱい泣きな~・・・。そしていっぱいいっぱい泣いて悲しみを手放しな~・・・。」と・・・。
その言葉を聞いて更に私はいっぱいいっぱい泣きました。

皆さんは 『喪の作業』という言葉をご存知ですか?!
小さい頃から私の側にはだいたいワンちゃんなどの動物がいて、何度か彼らとの辛い別れを経験してきました。
でも、この度ムサシが死んで生まれて初めてペットロス状態になり、そして生まれて初めて 『喪の作業』というものを自ら体験したのでした。

話は変わりますが、今から17年くらい前の事でしょうか・・・。
重度の糖尿病で入院していた猫ちゃんがいました。
飼い主さまご夫婦には子供さんががおられなくて、その猫ちゃんを子供の様にとても大切に育てておられました。
その子はいつも甘えん坊で元気な猫ちゃんでしたが、「食欲も元気もない。」ということで来院された時には、糖尿病の末期(正しくは糖尿病から来る合併症の腎不全の末期)になっていたのでした。
飼い主さまには、糖尿病について詳しくご説明し、そして入院中に毎日面会に来られる度にその子の状態を詳しくお伝えしていました。
ですが、残念な事にある寒い冬の夜、その子はついに息を引き取ってしまいました。
その子が亡くなった事をお電話でお伝えし、ご遺体を引き取りに来られた時に奥さまは 「いろいろお世話になりました。ありがとうございました。」と、涙ながらに言って連れてお帰りになりました。

ですが、それから二日程して、その方が血相を変えて病院に来られました。
「先生! 入院中のカルテ見せて!! カルテ下さい!!」と・・・。
「同じ方かしら!?」と疑いたくなるくらいこわばった表情で・・・何をお聞きしてもとにかくその一点張りでした。

私は、彼女の言葉を聞いて 「信頼関係の元に預けて下さっていると思ってたのに、〇〇さんは私の治療を疑ってみえるのかしら・・・?!夜中だって何回も様子を見に行ったりして、私なりに一生懸命治療させて頂いたつもりなのに、なんで~・・・!?」と、ショックのような落胆する様な何とも言えない気持ちになりました。
とは言え、カルテをお見せしない理由は一つもありませんでしたので、直ぐにカルテをお見せしながら、以前ご面会でいらした時にご説明した事とほぼ同じ事を再び彼女にお伝えしました。
「この日は、△△ちゃんのお顔つきも良く食欲もあり、ご機嫌でしたよ。何時にインシュリンをこれくらいうち、血糖値はこれくらいであり、そして腎臓の血液検査の値は・・・・。」という具合に全てお伝えしたのですね。

彼女は私の言葉の一言も聞き洩らさない様にじっくりお聞きになりながら、そして大粒の涙をたくさん流されながら・・・・最後にようやく納得して下さったようで(腑に落ちたと言う感じで)、「先生、解りました。本当にありがとうございました。」とおっしゃってお帰りになりました。

数日後、わりと懇意にして下さっていた精神科の先生のワンちゃんの治療をする機会がありましたので、その時の状況をその先生にお話してみました。
おそらく私の中で 「今回の事はこれでいいんだよね・・・。」と自分自身に言い聞かせながらも、どこか釈然としないところがあったんだろうと思います。

すると・・・開口一番 「工藤先生、それはね~・・・。心理学用語で 『喪の作業』って言うんだよ!自分が愛していた対象が亡くなってしまって、それをなかなか受け入れることが出来なくて、一旦自分を責めたりその時に治療していた医者や獣医を責めるんだよね。 そうこうしているうちにやっと自分の大切な愛した対象が亡くなったということを受け入れることが出来る・・・そういうのを『喪の作業』って言うんだよね・・・。」とおっしゃいました。 
(宜しければ、「喪の作業の話」と、「対象喪失の心理学 – Veritas 心理教育相談室 – nifty」を参照して下さい。)

あれから17年の月日が経ち・・・その後も飼い主さまの大切な家族である動物の命を預かる仕事をさせて頂いて、飼い主さまと動物のお別れの場面に何度も遭遇しました。
その都度、私なりに飼い主さまのお気持ちに少しでも寄り添って共感できるのであればそうしたいと心から願ってそうさせて頂いていたつもりでしたが、この度ムサシを失って久し振りに大切な対象を亡くした心の痛みを再び味わいました。
そして、この場に及んで生まれて初めて、今お話した糖尿病で大切な猫ちゃんを亡くした飼い主さま同様、『喪の作業』とでも言いましょうか、ムサシの死をちゃんと受け入れるまでの間、心の中でそうっと他人のせいにした日々が続いたのでした・・・。

ムサシとケンの写真

誕生日の前日に三男からメールがあった。「誕プレ少し待ってくれ!」と。
その2日後に渡されたのがこれ。ムサシとケンの写真である。
いつも机に向かうとこの2頭が見ていてくれる。(因みにケンはまだ生きてるが・・・。)

2014年 2月 03日掲載
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