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避妊手術について

 前々回で、「子宮蓄膿症」について触れましたので、今回は主に犬と猫の女の子の避妊手術の意味や、術後のメリットとデメリットについて簡単にご説明しますね。

1.避妊手術の目的

 避妊手術の目的は、永久的な避妊の他、生殖器(卵巣、子宮、膣・・・代表的なのが、子宮蓄膿症)の病気の予防と治療、そして雌性ホルモンが関与していると思われる病気(乳腺腫瘍や肛門嚢腺腫など)の予防にあります。

 避妊手術をする時期は、その動物の種類により性成熟(大人の身体になる時期)も異なるので一概には言えませんが、犬では6~15ヶ月、猫では6~9ヶ月で性成熟を迎えると考えたら、これより早期の時期が理想的だと言われています。(その理由は後述)

 あまりにも早すぎる避妊手術は、麻酔の危険性もありますし、老齢であれば見かけは元気に見えても、循環器系、呼吸器系、その他の病気を考慮して、慎重に行わなければなりません。

2.避妊手術の時期と乳腺腫瘍との関係

 乳腺腫瘍の発症は、避妊手術をする時期と大きく関連しています。

・犬の場合・・・初回発情以前,二回目の発情以前,二回目以降に避妊手術を行った場合の乳腺腫瘍の発症率は、それぞれ 0.05%,8%,26% だと言われています。
 その後発情(年齢)を重ねていく毎に、乳腺腫瘍の発症率は増加しており、2歳半以降になると乳腺腫瘍の予防的効果はかなりの率で落ちるという報告があります。

・猫では同様に、6ヶ月以前,7~12ヶ月齢,13~24ヶ月齢時に避妊手術を行った乳腺腫瘍の発症率は、それぞれ9%,14%,89%であり、24ヶ月以降は殆ど無効であり、避妊していない猫は、避妊している猫の7倍乳腺腫瘍のリスクが高いと言う報告もあります。
(因みに、猫の乳腺腫瘍の80以上は悪性だと言われています。)

 以上の事から、乳腺腫瘍の発症には性ホルモンが大きく関与しているので、性ホルモンの暴露の時期が短ければ短いほど、乳腺腫瘍の発症が抑えられると言えます。

3.子宮蓄膿症に関しては、どんな病気であったかは、前々回の「ちょっとしたお話」を参考にしてくださいね。

4.避妊手術のメリット

 2・3などの病気を予防できる事の他に、発情期のマーキングや発情期の鳴き声(猫)、そして発情期の不安行動(例えば、飼い主さまや同居動物を咬んだりする行為)がなくなったりします。

5.避妊手術のデメリット

 避妊手術によって、食欲抑制効果のあるエストロジェン(性ホルモン)の分泌が止まるので、術後、食欲増進によって肥満になる事があります。

 それと共に卵巣を除去したことにより、生体に必要なカロリーが15~25%減少するため、手術前と同じカロリーの餌を与えていると、やはり肥満になり易いと言われています。

 そして、術後の合併症として、卵巣の取り残しによる発情や子宮蓄膿症、そして尿失禁になる事もあると言われています。

 また、東洋医学的観点から言うと、体の中心線である大事な任脈(にんみゃく)にメスで傷を付けることは、あまり良くないと言われており、高齢になってから、冷え性になる動物も弱冠ですがいるようです。


 以上、避妊手術の概要を説明させて頂きました。
 「病気ではない健康な動物に麻酔をかけて、避妊手術するのはある意味可哀想だ。」と言うお気持ちも「本当にそうだな~・・・。」と、思います。

 ただ、今は20年や30年前とは違い、動物のワクチンやフィラリアの予防が徹底してきて、動物の寿命が長くなった分、上の2や3の病気も増えつつあると思います。
 天寿をまっとうするまでの間、これらの病気にならなければ、これに越した事はないのですけどね・・・・。

 ですので、これらの事を考慮して、未病と言う観点から若いうちに避妊手術をするか、どの動物も上の病気に罹るとは言い切れないから流れに任せるか・・・とても難しい選択だと思いますが、やはりこれらの病気になった動物達を治療させて頂く立場の私としては、最終的には、避妊手術をお薦めしたいと思います。

後は、動物達は口が利けませんので、飼い主さまの判断ですね・・・。。。

2008年 7月 07日掲載
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